*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

建設現場にスタッフロールが流れたっていいじゃないか。

 

SHIROBAKOアートワークス

SHIROBAKOアートワークス

 

アニメ『SHIROBAKO』が胸に刺さる。

 

 

録画番組が少なくなってくる番組改編期を利用して、Amazonプライムのウォッチリストを消化することにした。今まさに働き方(稼ぎ方)に悩んでいる私が、お仕事作品として名高い『SHIROBAKO』を選んだことは必然だとも言える。

 

 

私の仕事は“オフィス内装設計デザイン”と呼称できるけれど、その実、仕事内容は多岐に渡る。

現場を実測して図面を起こし、家具を含むレイアウトを作成する。レイアウトに受付などの壁面デザインが含まれる場合はそのデザインも行い、CGでイメージパースを作成。移転などで既存の家具を持ち込む場合は、家具寸法も全部採るし、新規で家具を購入する場合はメーカーの選定から天板の色まですべて提案する。並行して内装工事費用の見積も行い、照明の位置・種類、コンセントの位置・高さまで全部決めなければならない。

すべてを提案書にまとめてプレゼンし、何度も打ち合わせを重ねて発注をもらい、工事前に近隣に挨拶し、施工当日は早朝から職人と現場入りし、計画に問題がないか入念にチェックする。

私の会社は社長以下4名の小さな会社なので、基本的にこれらを自分+社長ですべてこなすことになる。先方の事情や規模にも拠るが、依頼から引き渡しまで期限が一ヶ月ないということがほとんどだ。

 

だいたい最初の実測で凹む。部屋内がきれいな長方形ということがまずないからだ。だいたい、どこかしらが斜めだったり柱が丸だったりして絶望する。そうすると必然的に図面を書く段階で寸法が合わなかったり足りなかったりで泣きそうになる。壁面デザインは社長チェックの段階でほとんどボツだし、3DCGにしたら使いたい壁紙が上手く表現されなくて頭が真っ白になる。

プレゼンに行けば「何かちょっと違う」「あと数パターン見たい」「安く格好良く」と言われる。細かい担当者だと「なんでこのデザインなの?」「○○を表すのにこの色味でいいの?」などとツッコまれる。

工事が始まれば職人さんから「こっち開きにするとここがぶつかるけどいいの?」「これ取ると跡残るけど補修見積に入ってないよ」「このクロスだと薄くて下地の悪さ全部拾っちゃうなぁ」と現場レベルの判断を求められる。

家具納品の段階で寸法ミスや発注ミスが発覚することもある。

そして引き渡し後に「ここにコンセント欲しいんですけど作れます?」とか、散々打ち合わせで説明したのに「これだと空調回らなくないですか?この壁の上って穴開けれます?」とか言われるのだ…仕事って。

 

だから宮森が新人で分からないことばかりの中、プロを相手にあちこち頭を下げてとにかくお願いしている姿も胸を打つし、納期が近いのにデザインにGOが出なくて何度も描き直していく内に何が正解なのか分からなくなる気持ちも分かるし、担当者レベルでOKもらってたのに、トップに全部ひっくり返されたこともあった。(完成後にクロスを全部貼り直して、タイルカーペットに至っては私が夜まで1枚1枚貼り直した…)

正直、デザインについては自分がやりたいことなんて出来た試しがない。だいたい社長かクライアントの意向に従うことになるし、それほど多く予算を割いてくれるところもないので、やれることが限られてくるのだ。

 

それでも「相手の言うことをハイハイ聞くだけではダメ」という劇中の小笠原さんのセリフ通り「自分を守るためにこだわりが必要」ということが最近本当に身に沁みて、潤ませた目でエンディングを眺めながらふと

 

建設現場にもエンドロールを流せたらいいのに

 

と思った。この現場にどれだけの人間が関わって、どういう役割の人がいて、その中に自分の名前が見付けられたら、何かがちょっと報われる気がするのだ。

 

私はまだこの仕事を続けるか迷っている。アニメ業界同様、こういった納期がある仕事はどうしても残業続きになるし、メンタルをやられる割に見返りは少ない。同じ給料ならば、もっと別の仕事を選んだ方が、体力的にも精神的にも良いように思う。あとはこの仕事が好きかどうかだけど、正直、建築はなりゆきで始めた仕事だから思い入れが全くないんだよなぁ…。それだったらアニメの方が好きだから続けられそう…と思ってしまう。

 

結局、楽な仕事なんてどこにもないんだけどね。