*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

私の働き方改革。

遅ればせながら、ようやく夏季休暇を取得した。3連休を含めて6連休である。

今の会社に転職して来てから一年が過ぎ、私はこの連休を利用して自分の働き方を見直すことにした。

 

きっかけは今から半年前に遡る。

半年前、私の仕事のモチベーションはマイナスの状態であった。

社長以下自分を含めて3名という中小企業に転職した昨年8月―――初日こそ私を“さん”付けしていた社長も、翌日には既に名字を呼び捨てにした。

理由は自分でも分かっていた。とにかくこの転職はミスマッチだったのだ。

 

経験者を採用したつもりの社長と、経験を積みたかった私―――。面接で自分語りしかしなかった社長と、転職の目的をはっきり伝えなかった私―――。

どちらも悪かった。

社長は採用に失敗し、私は転職に失敗したのだった。

 

社長の失意は明白で、私は連日厳しい言葉を投げかけられた。

「センスが無いんだよなぁ…」

「日本語がおかしい」

「さっきから展開図を書けって言ってるのに、なんで立面なんだよ」

社長と私は年齢が近いこともあって、社長は“このくらいは出来るだろう”と高を括っていたのだと思う。

しかし、この業界を10年以上続けてきた社長と、資格を取得しただけで現場経験がほとんどない自分では、何の一致点も無かった。

 

更に仕事に対する意識の温度差も追い打ちを掛けた。

 

社長は、目標としていた仕事で挫折し、様々な事情からまったく異なる業界で会社を起業した経緯がある。

ガムシャラに、まさに自分の力でここまで仕事を続けてきた、言わば努力の人だった。必死にしがみついて、知識を蓄え、ありとあらゆる方法でやり方を開拓し、利益を考えた。おそらく本来はそんなこととは無縁な人なのに、仕事のために自分を変えてきたような人だ。

一方私にとって、仕事は生活の一部であった。生活あっての仕事という考え方だ。だからそこまで必死に全力で仕事に向き合おうなどと思っていない。しかし同じ時間を費やすのであれば多少なりとも興味のあること(デザイン)を仕事にしたいなぁ、という程度だった。

しかし社長にしてみれば、同じアラフォーでバツイチ、これから老後のことも見据えなければならないというのに、何を日和っているんだという気持ちがあるに違いない。

 

そんな折り、翌日に飲食店のプレゼンを控えていたその日に、社長の怒りが爆発した。

 

まず先に、私の言い分を聞いて欲しい。

 

①飲食店のレイアウトは未経験だった。

②家具選びも未経験だった。

③CGパースを作成するソフトに殆ど慣れていなかった。

④社長が2泊3日の出張中で、毎日仕事の進捗を報告していたが、それに対して何の返信も無かった。

⑤プライベートを優先する考えなので、定時で上がり、週末もしっかり休んだ。

 

プレゼンの前日、定時の30分前に出張から戻ってきた社長は、私の出したプレゼン資料を見て大きなため息をついた。

 

「何これ、どこがブリティッシュなの?全然お客さんの要望が入ってないし、パースも暗いし色もおかしいし、どうすんのこれ?こんなんじゃ無い方がマシでしょ。どうすんだよ」

「毎日報告ってメール送ってきてたけどさ、本城が作りたいデザインがこれなの?これをお客さんに出して、どう説明するつもりなの?」

 

畳み掛けるように社長に質問され、私は何も返すことが出来ず、パニックに陥っていた。

デザインに対するこだわりなど一切持ち合わせていなかったし、お客様から請け負った“ブリティッシュ”というお題に対しても、軽く調べただけで突き詰めて考えてなどいなかった。

更に報告メールに返信が無かったために、この方向性で良いのだと思い、仕事を進めていたのだ。

 

19時過ぎから改めてブリティッシュに関する画像を集めて、自分がイメージするブリティッシュなデザインに近いものを選び出し、それをパースに当てはめる作業を行った。

しかし今度はそれを上手くパース上で再現出来ない。

 

社長に「もうパース無しで行けば」と突き放されたが「出来るところまでやります」と終電を見送った。

結果、朝まで社長にダメ出しをされながら作業を行うことになった。

 

「前の仕事で出来てたことが何で出来ないの?」

「仕事の段取りをイチから説明しないといけないの?そういう年齢でもないしさ」

「俺とか本城みたいなのはさ、パクリしかないんだよ。ブリティッシュな飲食店の写真を集めて、共通する色とかデザインを真似するのが一番早くて正確なんだよ」

「報告のメール見て電話したらもう帰ってるしさ。資料が間に合わないって思ったら、休みの日も出てくるとかさ」

「こんなのお客に見せて、このデザインに金払おうと思う?仕事ナメてんの?」

「もう少しさ、デザイナーって紹介出来るような服装とか髪型とか考えてくれない?」

 

一晩中こんなことを言われ続けた。

 

朝帰りして、彼氏にも怒られた。

 

「転職して通勤時間は長くなりました、給料は下がりました、残業は長くなりましたって全部ダメじゃん。辞めちまえよそんな会社」

 

その通りだと思った。条件はすべてマイナス、挙げ句センスがない、服装や髪型が地味など、人格的なことまで否定されて、そこまで言われて続けることだろうかと思った。

そうして出した結論は“とりあえず一年は何も考えずに続ける”だった。一年やっても待遇が変わらなければ、その時に改めて考えよう、と。

 

一年が経って、結果として給与面や残業面の待遇は変わっていない。社長の態度はだいぶ軟化した…とは言え、これまで言われ続けて失った自信ややる気は挽回出来るどころか、より失うような自分のダメっぷりを痛感する日々が続いている。

自分の人当たりの良さは、他人と争うことがこの上なく面倒だからだ。だから現場で「〇〇してください」「△△だから出来ないよ」「そうですか…」とすぐに引き下がってしまう。最近はこれがダメなんだと頑張って「じゃあどうすれば出来ますか?△△って何ですか?」と食い下がるようにしているが、これだってポーズで真剣ではない。自分の根底には常に【別にどっちでもいいけど】という冷めた本心があり、とことんこの仕事に向いていないということがわかったのだ。

 

ではどんな仕事が向いているのか。

 

残念ながら、それはまだ模索している最中である。強いてあげるなら接客業だろうな、とは思うが年齢的に立ち仕事に戻るのは不安あったりもする。

条件としては現状より改善したいと考え①家から近い②基本給が上がる③残業がないという3つの内最低2つを満たすことを目的とし、転職活動を始めた。

今回は前回の反省を踏まえ、長くじっくり取り組みたいと思う。そこには起業や副業も含まれているし、条件を満たせれば正社員じゃなくても良いと考えている。とにかく楽しく楽に最低限稼ぐ―――これが私の目指す働き方改革であり、私達以下の世代の大半が求めている働き方ではないだろうか。企業側も国側もそれだと困るだろうから、ミスマッチはしばらく続くのではないかな。