*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

グルテン不耐症と私。

二年前、私は突然グルテン不耐症になった。

この言い方だとあまりにも通用しないので、周囲の人には分かりやすく「小麦アレルギーです」と伝えるようにしている。そうすると「え?食物アレルギーって突然なるものなの?」と驚かれることが多い。アレルギーの多くは幼少期に発覚するものが多く、その期間を乗り越えてしまえばアレルギーになる心配はないと考えている人もいるようだが、要は花粉症と同じで個々人が元々持っている許容量を超えれば、いつでも誰でも食物アレルギーになる可能性がある。

 

発覚したのは、最初に症状が出てから一ヶ月以上が経過してからだった。

毎週末、夕方になると今まで感じたことのない腹痛が襲ってくるようになった。手足が震え、立っていることも座っていることも出来ず、床にへばりついて浅い呼吸を繰り返すことしか出来ない。時間にすればおおよそ30分程度で症状は過ぎ去るのだが、その間何度もトイレに行き、ひたすら下痢を繰り返す。ガクガクと震える膝と痛みで朦朧とする意識の中、あまりにも手が震えて携帯を操作することもままならない。命の危険を感じるほどの症状だ。

症状が収束に向かい、ようやく携帯が触れるようになると、もちろん“激しい腹痛 原因”でググる訳だが、そこで見つけたのが“グルテン不耐症”というキーワードだった。

 

その頃の私は、毎朝パン食派で、週末は家で昼食を摂ることが多く、大抵は手抜きをしてカップラーメンや冷凍パスタを食していた。そうして、腹痛が起きるのは決まって朝にパン、昼に麺類を食した日に限ることが分かったのだ。

 

グルテン不耐症”というキーワードに出会ってから、意識的に食べ物から小麦を抜くと腹痛の症状は出なくなった。グルテン不耐症の解説ページを読んでもらえば分かるが、実はこの事実こそが私がグルテン不耐症であるという証明に他ならない。残念ながら病院などの診断ではっきりと宣告される類のものではないらしい。(どうしても診断されたいなら数万円の血液検査で「小麦かもねー」くらいの結果は出してもらえるらしいです)

 

グルテン不耐症になって分かることは、世の中が小麦食品で溢れているという衝撃だった。特に小腹が空いた時に軽く口に入れられるものがけっこう少ない。例えばカロリーメイトは小麦の固まりだし(こんな時はソイジョイを探す)、サンドイッチの代わりにおにぎりを頬張っているとガチで食事しているひとに見られるので切ないことこの上ない。あるいは、カフェやファストフードと呼ばれる場所ではほとんど食事をすることが出来ないし、一度和定食屋さんでメニューのアレルギー表をもらったらサラダとコーヒー以外の全てに小麦が含まれていて絶望したこともある。(店員さん曰く、だしにも小麦が含まれているそうです)あと、夏場に何となく不調が続くと思ったら麦茶が原因で「えーっ?これも??」と思ったものである。

 

症状が表面化した原因は不明だが、転職をした直後だったので、知り合いには「ストレスだよ、ストレスが原因でアレルギーになっちゃったんだよ」と良く言われたものだ。あるいは、転職の前に始めたホットヨガ好転反応だとみることができるかも知れない。原因もさることながら、症状も曖昧で、腹痛覚悟でラーメンを一杯完食しても何事もないこともあれば、複数個のシュウマイで症状が出たりもする。また、症状も腹痛であったり、頭痛であったり、過度の疲労感であったりもする。不耐症というものがなかなか人に理解されないのも、このあたりが原因なのではないかと思う。

 

私は新垣結衣さんが好きだ。だから彼女がCMしているチキンラーメンが食べたい。ひたすら食べたい。なので米粉チキンラーメンを出して欲しい。これだけグルテンフリーが広がってきているのだから、そろそろ満を持して出してくれたって良いと思う。

 

そんな訳で、日清食品さんに期待しております。

結局建築を続けるしかなくなった話。

内装設計・デザイン会社に勤めたこの一年半……痛感するのは、自分の仕事に対する不誠実さと、圧倒的なデザインに対する思い入れのなさだった。

 

発注をもらって、いざ実際に施工という時に、もちろん私達は立会をする。

計画段階で一度だけ現場調査をするだけなので、実測や写真判定は完璧ではない。

天井まで壁を立てようと計画したところに照明があったり、柱と柱の間隔が数センチズレていて、図面通りに行かないということがママあるからだ。

 

その時に現場で判断を下すために立会をする訳だが、残念ながら私は大概この判断を間違う。間違うと分かっているから、直感で出た答えとは逆の判断をしてみることもあるが、それがやはり間違っている。絶望的なセンスのなさ。

 

例えば、壁を立てるところに照明がぶつかってしまうとする。

その場合、壁をずらすか、照明をずらすかの判断を求められる。職人さんとしては壁の位置をずらす方が断然やりやすい。何故なら照明の場合、天井が絡むので、埋め込み照明の場合には天井の開口部を広げなければならず、かつ照明の移設跡が残るので補修や塗装など、やることが一気に増えるからだ。

 

ただ、壁の位置をずらす場合には、そもそも「何故この位置に壁を計画したのか」をきちんと理解していなければ安易に判断を下すことはできない。

 

通路幅を確保するため?

特定の家具を配置するため?

 

真剣に図面と向き合っていれば、判断する時間は短くて済むはずだ。

もしくは図面を見ただけで、設計の意図を汲めるセンスがあれば、判断を大きく間違うことはないはずだ。

 

しかし私はそのどちらも持ち合わせていなかった。

元々ないセンスを引き出すには、経験を積むしかない。

その経験値を貯めるまで、私は図面に対してもっと真剣に、脳みそを振り絞って取り組まなければならなかった。

 

しかしサボってしまうのである。疲れるから。

“私だったら”ここまで気にしない――という、“私基準”で仕事をしてしまう。

もちろん“お客様目線”で考えているつもりではある。

しかし社長に言わせると「ぜんぜんお客様の仕事を分かっていない」し、「同じ打ち合わせに参加しても意図の裏がぜんぜん読めていない」し、「視点がズレている」らしい。

 

正直、今の会社に、今の社長の下に付くまで、そんなことはまったく自覚してこなかった。

たしかにこれまで、自分が“ここまで”と譲歩できる位置までしか振れ幅を設定してこなかった。

自分が“頑張った”と思える位置は自分で決めてきた。つまり「楽」な領域を自分を中心とした円周に配置し、あらゆる方向に合わせて来たけれど、その「楽」な領域を超えてまで仕事をしようとは思わなかったし、名声を得ようとも思わずに生きてきた。そしてこれまでずっとそれで上手くやってきたつもりだった。

 

ある人には「ゆかちゃんのこと嫌いな人なんていないでしょ?」と言われたし、ある人には「本城さんみたいに何でもできる人って本当にいるのね!」と言われたことだってある。

それがここに来て自分が「なんにも出来なくて」「どうしようもなく頭が悪くて」「判断のひとつもまともに出来ず」「ただ言われたことを左から右に伝えるだけで」「高校生のバイトでも雇ったほうがマシ」な存在なのだと気付かされた。

毎日毎日がいたたまれなくて、だけどそれをすぐに補う方法も見つけられなくて、ない頭で考えまくって出した結論も誤りで、思い描いたデザインもまったく現場にそぐわなくて……そんな自分に疲れてここを逃げ出そうと思った転職だったから、もう建築からは離れるつもりだった。もしくは建築部材を扱う会社でも事務職を目指そうと転職活動を始めた。

 

しかしながら40歳を過ぎての女性の転職活動はまったく甘くない。

リクルートエージェントからもマイナビエージェントからも【大変申し訳ございませんが、現時点では求人のご紹介が難しい状況でございました】の一文が届いて以降、まったく連絡がこない。

転職サイトからの応募は軒並み書類審査で不採用。

さすがに建築部材系の事務職応募については、ほとんど面接まで進めたが基本給が16~18万と、経験に準ずる折り合いがまったく付かず、お互い「ご縁がありませんでしたね…」とお別れをする結果となった。

 

結局、中途半端に建築に携わってきたアラフォーには、もう建築の道しか残されていなかったのである。

 

今の会社には一年半という短い時間しかいなかったけれども【プロとは何か】ということを考えさせてくれる、貴重な経験をさせてもらった。

施主の希望をそのまま描き起こすだけではプロとは言えない。

その希望に対してデメリットを提示して解消したり、その希望の裏を汲み取って、施主が気づかなかった新たな提案を打ち出したり、ここだけは譲れないというプライドと熱意を持つことも必要だということを痛いほど理解した。

この会社に入らなければ、私は自分の素人さに対して深く考えることもなかっただろうし、いかに自分がこれまでなにも考えずに仕事をしてきたかを自覚することもなかっただろうと思う。

また、設計に楽な方法なんてなかったし、どんなに経験してもやってくるトラブルは千差万別だし、分からないことは訊くしかないし、初めてのことはやってみるしかないという現場のリアルを知れたことも十分自信につながった。

けっしてツラいだけの日々ではなかった。入社して良かったと思っている。

 

私はこれからも図面を引いて、提案書を作る。

営業の人や職人の人や材料屋さんと話を繰り返して学んでゆく。

もう私にはこの道で稼ぐほかないのだ。とことん研究して試して感じて確固たるものを自分で作り上げていくしかない。

私は腹をくくることにした。

 

とはいえまだ起業も諦めていないけど。占い師の道も諦めていないけど。動画を作ろうとも考えているけども。

それが私なのだから仕方ない。

手っ取り早く、建築と占いを絡めて風水でも勉強しようかしら?

三軒家万智さんもとっても詳しかったしね!必須スキルかも。

 

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どうだったら私は退職せずに居られたのか。

結局、2月末で今の会社を退職することにした。

なかなか社長から「分かった」と言われなかったため、一応“退職願”を提出したのだが、それが受理された。

社長からは「本当に残念だ。自分も厳しく当たり過ぎた。申し訳なかった」と言われた。私は「最後までご期待に添えず、申し訳ありません」と伝えた。

本当のことだった。

私は最初から一切の期待に応えられず、一年半という短い期間で退職を決めた。

人生で最も短い在籍期間だった。

 

退職の決め手は何だったのか?

退職時に社長にももちろん説明を求められたし、面接官にも問われた。

しかし、一度でも退職を考えた方であればお分かりであろうが、理由は一つではない。

しかし正直に答えれば決め手はあった。

それは社長と外出をする予定があり、そろそろ時間というときに「用意できました」と告げたところ「なんでお前そんなに暇なの?」と返されたのだ。

こういう、不機嫌を周囲に撒き散らす社長の態度は、入社時から本当に本当に苦手だった。更に、機嫌の良いときと悪いときでまるきり対応が違うのだ。

小さい会社なので、どんな案件でも社長確認が必要で、場合によっては不機嫌な社長に質問をしなければならない。

最初はものすごく頑張った。仕事だから、仕事に必要な確認だからと、自分に言い聞かせ、勇気を振り絞って問いかけた。

しかし「そんなの俺に聞いてもしょうがないでしょ」「本当にそれが良いと思ってんの?」「何言ってるかぜんぜん分かんない」とあしらわれる日々が続いた。

「どうすれば…」食い下がると「自分で考えて」と返された。

自分で考えて考えて、行動に移すと――「なんで俺に聞かないの?」

そんなことが一年ちょっと続いての「なんでお前そんなに暇なの?」という台詞だった。

何だか唐突に

“――ああ、もう無理だな”

そう思った。

 

途中入社してきた年下のTさんの存在も大きかった。

Tさんの入社によって、社長が誰に対しても当たり散らしている訳ではないことが明らかになったのだ。

Tさんは確かに仕事ができる。見習いたいところがたくさんあって、彼女と仕事を続けていれば、吸収できることもたくさんあるだろうと思う。

彼女が入社して一年が経つが、社長が彼女に厳しく当たるところを終ぞ見ることはなかった。

つまり、私も仕事がきちんと出来ていれば、社長にそこまでツラく当たられることはなかったはずなのだ。

不機嫌な社長を前におどおどと要領の得ない質問をして、その怒りを増していたのは紛れもなく自分だったのだ。

そのことに対する認識を深くすることで、私はより社内での自分の位置を見失った。

ついには社長が誰かと話している声が聞こえてくるだけで、手が震え、動悸がした。

いつまた叱責が飛んでくるかと神経をすり減らした。

なぜなら私は社長に訊ねるべき事柄を延々と保留したまま仕事を進めており、作業中に浮かんだ質問も無かったことにして、気づかないふりをしていた。

典型的な仕事のできないダメ社員である。

ダメ社員でいることも辛かったが、質問をしてまた突き返されるかもしれないことが、怖くて怖くて仕方がなかった。

自分で「これは心療内科に行くべきではないか」と思うところまで追い詰められていた。

結局、夜はよく寝れたし、食欲もあったので、通院には至らなかったのだが。

 

どうだったら私は退職せずに居られたのか。

社長からそんな扱いを受けていたから、自分はこの会社に必要ないものだとばかり思っていた。

また、これまでの退職者の話を聞いていると、社長は“去るもの追わず”なタイプのようだったから「退職したい」と申し出て、まさか引き止めに遭うとは思ってもみなかった。

「これは相談なんだよね?」と言われたので「…いえ、実はすでに内定をいただいている企業様がおりまして」と返すと「それはずるいよ。俺はずっとこのメンバーでやっていきたいってずっと言ってたのに」と言われた。

たしかにそんなことを昨年の夏頃言われた気もしたが、一年半この会社に在籍をして、一度も自分が必要とされているなんて感じたことはなかった。

仕事を褒められたことも無ければ、感謝されたことも無かった。

最近になって昇給はされていたが、それがこれまでの仕事の結果なのかこれからの仕事に対する期待なのかもわからなかった。

これからの仕事については外回りの営業や設計方面で期待されていることは分かったけど、それは私のやりたい仕事ではなかった。

社長は「俺のコミュニケーション不足だな」と何度も口にしていて、確かにそれも退職理由の一つではあるけれども、果たして私が退職を切り出さずにいたならば、社長がそれに気づけたかは甚だ疑問ではある。

現に、とても残念なことに、私の退職が決まってから社内の雰囲気はそれなりに良くなった。

そもそも今の社内で、不機嫌を持ち込んでくるのは社長だけで、他のメンバーは明るくて前向きで人柄の良い人達ばかりなのだ。

だから社長一人が機嫌に気を遣うだけで、社の雰囲気は変わった。

では私が退職を後悔しているかと言われれば、そんなことは一切ない。

社長の無理が痛いほど伝わってくるから。きっとこれは長くは続かないだろうと思うから。

どうだったら私はこの会社に残ると選択できたのか。最近、そのことについてよく考える。

せめて給与の手取りが今の1.5倍あってくれたら。

せめて休日出勤の代休が認められていたら。

せめて残業手当がついていたら。

せめて残業という風習がなければ。

思いつくのは福利厚生についてばかりだったりする。

もし常に退職者が出ていて、人材の確保に悩んでいる経営者の人がいれば、貴方がその人に何をして欲しいかではなくて、相手がどんな働き方を望んでいるかを訊ねて欲しいと思う。

転職活動中に様々な募集案件を見てきたけれど、今は働き方改革の影響でどこもすこぶる待遇が良い。カレンダー通りの休みで残業無しという企業がほとんどになってきている。

また仕事内容によっては在宅と出社を自分で振り分けてくれて構わないと言ってくれる会社もあった。

どの会社でも人材不足がとても深刻なのだということが、私レベルの転職者でも実感できた。

現状の待遇に不満がある人、上司や同僚との関係に悩んでいる人、ぜひ気晴らしに転職活動をしてみてほしい。

転職サイトに登録して、毎日流れてくる新着を眺めてみるだけでもいい。

自分の価値を客観的に掴めるはずだから。おすすめする。

 

職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方

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自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書
 

 

 

 

 

働き方の次は、結局何がやりたいかだ。

新年から仕事について考えている本城です。

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 

 

というのも、考えざるを得ない理由がもちろんここにはある。

昨年暮れに、現勤務先に退職を申し出たものの、思わぬ引き止めに遭ってしまったのだ。

社長の引き止めはおよそ3時間に及び、立ちっぱなしの私は疲れ果てて一旦持ち帰ることにしたのだ。

分かります?世の上司という立場の皆様よ。タイムカードを切って19時半に退職を申し出て、あなたは自分の机に座り、私は立ちっぱなし。22時半までその状態ですよ?だからそーゆーところなんですよ!(# ゚Д゚)部下が退職を考えるのは!仕事の内容じゃない。待遇の問題じゃない。私の退職は、あ・な・たが原因なんです!

 

と、大声で叫びたいところをぐっとこらえて、その時の会話の内容を振り返ってみよう。

 

私のアプローチの流れは基本的に次のようだった。

 

①性格的な問題→②自分の能力不足→③やりたいこと→④前会社からの引き抜き

 

切り口としては①自分のおおざっぱで楽観的な性格が、今の仕事に向いていないという根本的で変えがたい部分を前面に押し出す形とした。それを踏まえ②それらを補えるだけの交渉術や思考能力に欠けている点を付け加え、③デザイナーが他にいる今、自分がデザインを担当する見込みがほとんどないことを確認した。

④に関してはあの場では言わないつもりだったが、引き止め方があんまりだったので思わず口走ってしまった。結局それも効果がなかったのだけれど。

 

対する社長の応対はこうである。

 

①②については自分も昔同じだったから、経験で賄えるということ。これは確かに一理ある。私自身、1年半という短いスパンで退職するのは不本意だと思っている。

③については、私の場合普段から考えていない分、どうしてもデザインの一案を出すのに時間が掛かる為、スピードが要求される案件についてはデザイナーのAさんに回すのが効率的だということ。役割分担という認識を踏まえて、私に対しては設計の遵法性に関わる建築士的な立場を担ってほしいということ。

これに対しては、Aさんの方が圧倒的にセンスが良く、更に裏付けのあるデザインができる人なので、なんの異議異論もない。もう争う気にもならないくらい格が違うので、嫉妬すら起きない。スピードに関しては、別に私は遅い訳ではなく、実際デザイン案はポンポン出している。しかし、どれも薄っぺらで浅い、何も考えていないことがデザインにも表れているため、まず社長のOKが出ないのだ。「なんで木目なの」「なんでこの色なの」「なんでここに格子を作るの」という社長の問い、ひいてはお客様からの問いに私はいつもなんにも答えられないのだから仕方がない。私はいつも自分の感覚だけで適当に作っている素人なのだということが良くわかった。

だからと言って別に設計がやりたい訳でもないので、社長に求められた役割にはまったく魅力を感じなかった。建築基準法、消防法、都条例など、様々な制約の中で建物が建てられていることを知ることは確かに面白かったけど、それを仕事にしたいとは思えなかった。

一方で、私の薄っぺらなデザインでも、インテリアコーディネーターという肩書ゆえに、場所さえ違えば輝くことも分かっていた。「どうしてこのデザインなのか」をプロとして説明が出来るくらい突き詰めないといけないことはとても身に沁みたが、「センスない」「浅い」「何も考えてない」と図星を刺され続け、堪え、デザイナーとして成長したいと思えるほど、根性もなければ思い入れもない。

そんな訳で①から③まで話した段階で、社長から「そんな気持ちで転職したら、絶対に次でもうまく行かない」と言われたので、カチンと来て④実は前の会社から声を掛けてもらっていると切り出してしまったのだった。人生振り返ると私は結構カチンと来やすい。

 

①から④まで話し終えると、社長はとにかく「逃げだ」「甘えだ」と私を責め続けた。だからそれな。私は逃げると決めて転職活動をしたのだ。人をイジることが親しみの裏返しだと勘違いしている、自分の不機嫌を社員に受け止めてさせることを甘えだと気付かない社長から逃げて、このままの私で良いと言ってくれるところに逃げ込むのだ。

実際、私は社長の声を聞くだけで動悸がして、手が震えるくらいまで精神的に追い込まれていた。仕事の進め方で悩んで相談しても「自分で考えろ」と言われ、自分で考えて動いても「なんで確認しないんだ」と責められ、最終的には「お前は暇そうでいいよな」と深いため息をつかれた。自分がいるだけで責められると思ったら、息苦しくて仕方がなかった。早くこの場から逃げ出したい、そう思ったのだ。

 

 

転職活動を始めるだけでも気は紛れた。転職サイトに登録しておくだけで、スカウトメールがたくさん来る(主に自分の希望とは異なる職種ばかりからだけど)ので、必要とされている自分を実感できた。

やっぱり自分には図書館員が一番合ってるなぁと思って司書に応募したり、建築・デザインは向いてないなと思って一般事務職に片っ端から応募してみたりしたけれど、結局面接まで残るのは建築系だけだったりする。仕方ないよね、アラフォーだもの。

 

家から近くて、残業がないか残業代が出る会社を条件に掲げて転職活動をした結果、見えてきたのはその先にある【何がやりたいか】だった。建築系であるとして、私は現場で直接打ち合わせをしたり交渉したりするよりも、そういう人のサポートとして図面を清書したり資料を作ったりしたいなぁということと、法人的なエントランスデザインや空間デザインよりも、住宅系の比較的狭いところでのデザインの方がやりやすいなぁということだった。

なので年明けの退職交渉は、この【やりたいこと】一つに絞って!話を進めたいと思っています。

 

無理だと思うけど、可能であれば1月末…ダメなら2月末…最悪でも年度末…には退職したい、いや、します!

建設現場にスタッフロールが流れたっていいじゃないか。

 

SHIROBAKOアートワークス

SHIROBAKOアートワークス

 

アニメ『SHIROBAKO』が胸に刺さる。

 

 

録画番組が少なくなってくる番組改編期を利用して、Amazonプライムのウォッチリストを消化することにした。今まさに働き方(稼ぎ方)に悩んでいる私が、お仕事作品として名高い『SHIROBAKO』を選んだことは必然だとも言える。

 

 

私の仕事は“オフィス内装設計デザイン”と呼称できるけれど、その実、仕事内容は多岐に渡る。

現場を実測して図面を起こし、家具を含むレイアウトを作成する。レイアウトに受付などの壁面デザインが含まれる場合はそのデザインも行い、CGでイメージパースを作成。移転などで既存の家具を持ち込む場合は、家具寸法も全部採るし、新規で家具を購入する場合はメーカーの選定から天板の色まですべて提案する。並行して内装工事費用の見積も行い、照明の位置・種類、コンセントの位置・高さまで全部決めなければならない。

すべてを提案書にまとめてプレゼンし、何度も打ち合わせを重ねて発注をもらい、工事前に近隣に挨拶し、施工当日は早朝から職人と現場入りし、計画に問題がないか入念にチェックする。

私の会社は社長以下4名の小さな会社なので、基本的にこれらを自分+社長ですべてこなすことになる。先方の事情や規模にも拠るが、依頼から引き渡しまで期限が一ヶ月ないということがほとんどだ。

 

だいたい最初の実測で凹む。部屋内がきれいな長方形ということがまずないからだ。だいたい、どこかしらが斜めだったり柱が丸だったりして絶望する。そうすると必然的に図面を書く段階で寸法が合わなかったり足りなかったりで泣きそうになる。壁面デザインは社長チェックの段階でほとんどボツだし、3DCGにしたら使いたい壁紙が上手く表現されなくて頭が真っ白になる。

プレゼンに行けば「何かちょっと違う」「あと数パターン見たい」「安く格好良く」と言われる。細かい担当者だと「なんでこのデザインなの?」「○○を表すのにこの色味でいいの?」などとツッコまれる。

工事が始まれば職人さんから「こっち開きにするとここがぶつかるけどいいの?」「これ取ると跡残るけど補修見積に入ってないよ」「このクロスだと薄くて下地の悪さ全部拾っちゃうなぁ」と現場レベルの判断を求められる。

家具納品の段階で寸法ミスや発注ミスが発覚することもある。

そして引き渡し後に「ここにコンセント欲しいんですけど作れます?」とか、散々打ち合わせで説明したのに「これだと空調回らなくないですか?この壁の上って穴開けれます?」とか言われるのだ…仕事って。

 

だから宮森が新人で分からないことばかりの中、プロを相手にあちこち頭を下げてとにかくお願いしている姿も胸を打つし、納期が近いのにデザインにGOが出なくて何度も描き直していく内に何が正解なのか分からなくなる気持ちも分かるし、担当者レベルでOKもらってたのに、トップに全部ひっくり返されたこともあった。(完成後にクロスを全部貼り直して、タイルカーペットに至っては私が夜まで1枚1枚貼り直した…)

正直、デザインについては自分がやりたいことなんて出来た試しがない。だいたい社長かクライアントの意向に従うことになるし、それほど多く予算を割いてくれるところもないので、やれることが限られてくるのだ。

 

それでも「相手の言うことをハイハイ聞くだけではダメ」という劇中の小笠原さんのセリフ通り「自分を守るためにこだわりが必要」ということが最近本当に身に沁みて、潤ませた目でエンディングを眺めながらふと

 

建設現場にもエンドロールを流せたらいいのに

 

と思った。この現場にどれだけの人間が関わって、どういう役割の人がいて、その中に自分の名前が見付けられたら、何かがちょっと報われる気がするのだ。

 

私はまだこの仕事を続けるか迷っている。アニメ業界同様、こういった納期がある仕事はどうしても残業続きになるし、メンタルをやられる割に見返りは少ない。同じ給料ならば、もっと別の仕事を選んだ方が、体力的にも精神的にも良いように思う。あとはこの仕事が好きかどうかだけど、正直、建築はなりゆきで始めた仕事だから思い入れが全くないんだよなぁ…。それだったらアニメの方が好きだから続けられそう…と思ってしまう。

 

結局、楽な仕事なんてどこにもないんだけどね。

 

残念ながら、結婚は貴方の何物をも変えない。

現在20代半ばの男の子・Wくん。

職場の後輩である彼は、結婚を考えている彼女がいるにもかかわらず、フェスで出会った女の子とその日の内に関係を持ち、更にその相手に本気になられて迷惑――などと曰うクズ野郎である。

 

本人も「いやぁ、俺マジでクズなんで!分かってますんで!」とかしょっちゅう言い訳しているが、自覚していることは別にエラくも何とも無い。“分かってんならさっさと直せよ、バーカ”である。

 

そんな彼が、二言目には「結婚したら変わると思うんすよ、俺」と口にする。「子供はそんなに好きじゃないけど、自分の子供だったら可愛がれると思うし」「結婚したら明け方までゲームとか出来なくなるんで、今の内一人暮らしを満喫しておかないと」

 

彼のこんな言葉を聞かせられる度に、川平慈英さんばりに“ムムッ”と思ってしまう。――この子、自分の為にも、相手の為にも、結婚しないほうがいいんじゃないの?

 

実際、私がバツイチである理由の一つは、自分自身が何一つ期待通りに変わらなかったからだ。

 

結婚したら料理とか好きになるかも。

結婚したら子供欲しいとか思うかも。

結婚したら色んな意味で大人になれるかも。

 

なんだかんだで10年も結婚生活を送ったが、年月も環境も私を変えることは無かった。衣食住に興味を持つことも、子供を作りたいと思うことも、大人の常識を身につけることも無かった。人が変わるのに、年月も環境も必要だけれど、それ以上に【変わるんだ】という気持ちが無ければダメなのだ。自分のために、彼女のために、子供ために【変わるんだ・変わる】という覚悟――本当の意味で、愛が試されているのだ。

 

逆に言えば、相手だってそう簡単には変わらない。当たり前だけれど、貴方に理想の結婚生活があるように、相手にも理想の結婚生活がある訳で、中身によっては結婚前からその理想のズレが明確になっていることもある。本当に残念だけれど、そのズレが自然に埋まることはない。ズレに対してどちらかが諦めることで一度解消したかに見えることはあるが、それは諦めた側のわだかまりとしてずっと心に残ることになる。相手の心にわだかまりがあることを、諦めさせた側が受け止めて、同様に心に残すことでしかこの問題は昇華できない。特に夫婦関係に於いて、このことは至極当然の思いやりだったりするのだけれど、自分も含めてみんな自分本位になりがちなんだよなぁ。

 

じゃあ、結婚前にそういう面倒な部分まで踏み込んで話し合っておけってこと?と思われるかもしれないが、結婚前の浮足立っているカップルにそんな酷なことは言わない。実際、結婚なんてそこまで意味のないこと(してみれば分かるけど、結婚したからって何が変わるわけでもない)に踏み切るには、多少の勢いと思い込みが無ければ出来ないと私は考えている。だから勢いで子供を作るのもいいし、籍入れてもいいし、仕事を辞めるのもいい。クズ男の後輩も、彼女と結婚してみればいい。そしてぜひその身を持って、結果を実感して欲しいと思うのだ。