*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

完全文系出身の私が、何故いま建築に携わっているのか。


あいつ、建築辞めるってよ。 | 建築嫌い系建築ブロガーによる建築のこと。

"空間デザイナー募集"の触れ込みで今の会社に転職してきた私ですが、今やらされてる事ってデザインじゃなくて設計じゃね?と思い立ち、"設計士に向いてる人"でググって出会ったこのblog…むちゃくちゃ共感しました。厳密に言うと私がやってることは設計じゃなくてプランナーなのですが…。とりあえず思いの丈を綴ってみることにします。

 

そもそもどうして今の仕事に

私は建築がやりたかった訳ではありません。むしろ再就職するまで、衣食住にまったく興味がない人間でした。たまたま施工会社(あとで"ナンチャッテ"施工会社だと分かって辞めるのですが)に事務として再就職することが出来て、たまたまカラーコーディネーターとインテリアコーディネーターの資格を取らせてもらえるというので取得しました。そうしてたまたまインテリアコーディネーターの枠が空いたので、事務とコーディネーターを兼任することになり、たまたまCAD図面を引ける人がいなかったので覚えて使えるようになっただけです。在籍していた3年の出来事でした。

前の会社は社長を始め、建築の素人集団でした。地道に原状回復だけやっていければ良かったのに、元請けの要請でリノベーションも手掛けるようになり、大きな工事をやればやるほど赤字になるような会社でした。だってそんな大きな工事、見積を取れる人間がいないんですよ。押入れ潰してトイレにしましょうとか元請けは簡単に言うけど、そこに給排水を回すことが出来るのか、どうやって勾配を取るのか、そういう知識のある人間がこちら側にいないから、言われるがままユニットトイレの金額だけで見積しちゃう。発注が来てから職人さんに「こんな金額じゃ出来ないよ」って言われても後の祭り。そんなことの繰り返しでした。

それなのに社長は「そこを何とかするのが職人だろう?」と常に上から物を言う人で、私はその態度が許せませんでした。協力会社さんがいなければ塗装も出来ないクロスも貼れない。誰のお陰で内装業者を名乗っていられるんだと思いました。だから自分だけでも職人さんが仕事をしやすいような指示書を書こう、図面を引こうと心がけました。ただ、会社としては事務員扱いなので疎まれましたけどね…仕事が遅いから。

 

内装デザインの仕事は面白い

そうやってコーディネーターとして内装材を選んだり、職人さんとやり取りをするようになって仕事は面白くなってきました。コーディネーターは私一人しかいなかったのでかなり自由にやれましたし、賃貸物件がメインだったので内装デザインは丸投げってことも多くて、毎回自分でテーマを決めてプランニング出来たことも大きかったです。更にプレゼン資料を作るのも楽しかったー。元々、同人誌を作っていたのでPhotoshopIllustratorで資料レイアウトを考えるのも趣味の延長って感じでした。更にこの仕事を天職だと誤認させたのは、デザインに対して一切のこだわりを持てなかったことです。所詮他人が住む部屋、所詮元請けの責任…自分に何のデメリットも無いので、無責任にデザインパターンを量産出来ましたし、それが採用されなくても全く傷付かなかった。それよりもプレゼン資料を作ることそのものに満足出来てしまったのです。

 

インテリアコーディネーターとは

一方で、アラフォーでそんなことをしていても、何のキャリアに繋がらないことも自覚していました。「このカタログのこの価格帯の中からクロスを選んで」なんてことは誰でも出来て仕事ですら無い。IC(インテリアコーディネーター)の肩書があるから多少の箔が付くくらいです。

更に、ICの試験問題を見てもらえばわかりますが、ICの資格取得にセンスは関係ありません。一次試験の内容は基本的な建物の構造から家具の歴史、建築用語や人体モジュールなど幅広く浅いのが特徴です。二次試験は実技ですが、家具の配置が主な目的となっています。勉強内容は興味深かったし、全く実務に役立たないとまでは言いませんが、どちらかというと家具販売員が持つべき資格じゃないかなーとは思いました。その辺りの認知がICに関しては実際あやふやで、資格取得を勧めてきた前会社の社長だってよく分かっていなかった。「うちにはインテリアコーディネーターがいますよ」と言いたいだけ。でもこのネームバリューはかなりの影響力があって、私が名刺を出すだけで喜んでくれるオーナーさんは多かったです。それは嬉しい反面とても申し訳なかった。資格を取得したばかりの私には何の実績もなく、何一つ自信を持って提案していなかったからです。

 

コーディネーター・デザイナー・プランナー

更によく勘違いされるのがインテリアデザイナーやインテリアプランナーの分野です。プランナーがより建築士に近く、デザイナーは設計よりで、コーディネーターは家具レイアウトに近いと大別することが出来ますが、実際は全部ごちゃまぜに認識されていることが多いと思います。私も間取り変更でどこの間仕切りを取るか、3点ユニットからトイレを独立させるのに、どうやったらいいかというデザイナーやプランナーのような仕事もよく手掛けていました。更にCADが使えるのが私だけだったので、手書きの実測図面をCADに書き起こして、そこからプランニングするとかも私の仕事でした。もうこうなってくるとIC関係無くない?!って感じですが…。

もちろん、ここにトイレを持ってきたいけど実際に施工可能かとか、この壁は抜いて問題ないのかなどの知識は一切ありませんから、分からないことは全部職人さんに相談して進めます。職人の皆さんが本当に親切に根気よく教えてくださったのが、心強く有難かったし、そういう職人さんに恵まれたことが一番の幸運でした。だからもっと現場を知りたいと思うようになり、転職を考える訳ですが、もう少しあの厳しく優しい環境で勉強してから飛び出せば良かったと後から後悔する訳です…。

 

私の仕事って何だろう

前会社の社長はtyazukeさんの書くIT老害の典型的人物でした。社長がPCを使えないから、書類の清書やデータの抽出は全部事務員の仕事でしたし、「パソコンでやれば何でもすぐ終わる」と思ってるので、事務員は楽している・どうせ暇だろうと下端に見ていました。それに比べると現会社の社長は、会社設立当初すべて一人でやっていただけあってPC知識も豊富で、何でも出来る人です。が、だからこそ社員を増やす=自分の分身を増やすと思っている節があります。社長が行けない物件の実測に行って平面図を書き起こしておくとか、社長が忙しくて手が回らない物件のゾーニングをしておくとか、そういうことが今の私の仕事です。社長とはそんなに歳が変わらないんですけど、tyazukeさんも書いてますが「俺の背中を見ろ」的な教育方針なのでとにかくやってみての一点張り。ツライ。だって絶対間違う、注意されるって分かってチェック受けなきゃいけないんですよ…。今やらされてるのなんて15階建てのオフィスゾーニングですよ。案の定「これじゃ建築基準法に引っかかるでしょ」って赤が入りましたが…その…建築基準法なんて今まで考えたこともなかったんですけど…いやだから今勉強しろってことですよね、スミマセン…。

私より先に入った若いデザイナーが1ヶ月で辞めた理由がよく分かる。“空間デザイナー”として雇われたはずなのに、やってることと行ったら実測・図面書き・3Dパーツ作成・工事申請…って何にもデザインしてないじゃん!って思いますもん。内装材を選ぶのも社長だし、資料レイアウトのデザインも社長のセンスに合わないと却下されるし…。

でもこうやって書き並べてみると、私は現場を知りたくて飛び出した訳だし、机上の空論じゃなくて現場に沿った空間デザインをするためには自分で図面を引けた方が絶対にいいし、いつか一人でこなさなきゃいけない仕事なら早いうちに経験しておいた方がいいし、やらされていることはまったく無駄じゃないんだなーと思えてきた。アウトプットって大事だ。私の会社は内装系のせいかカレンダー通り休めたりして、tyazukeさんほどまだ建築に絶望してないのですが、tyazukeさんが来年度にはもう建築業界にはいないと書いてあって羨ましく思ったのもまた事実です。向き不向きで言ったら、とても自分が建築に向いているとは思えないので。

 

完全文系出身の私が、何故建築に携わっているのか

私は物語が好きです。小説・漫画・ドラマ・アニメ・舞台・映画…エンタメと呼ばれるものは何でも好きです。引いては人も好きです。人生は物語そのものなので。

だから内装デザインを考える時、私はそこに物語を描きました。どういう人が住んで、どう生活するのか…建築=理系だとばかり思ってましたが、物語という切り口からなら自分も建築に携われる。その気持ちで今もこの業界の端に身を置いています。前前職である司書のほうが、断然自分に向いていると思いますし、人からもそう言われます。戻れるものなら戻りたいですが、生活が掛かっているので残念ながら今この職にしがみつくしかありません。どうせやるなら楽しくやりたいので、いつか自分のフィールドとして楽しめるように、今はこの遅い下積み時代を乗り越えたいと思っています。

もうね、最終的に建築やるんだったら大学も建築系に進めば良かったよ!って思います。経験値は買えないし、先に始めた人には敵わないので、早くから夢を持って取り組めてる人はそれだけで勝ち組だなって思います。

 

さて明日もよく分かんないけど現場に直行するよ!