家売るオンナ 第2話考察。
引きこもりの城は実在するのか。
不動産関連会社で働いているゆかです。
今までになかった不動産ドラマ、更に大好きな北川景子さん主演!とのことで毎週楽しみに観ています。
第2話は不動産を買って、人に貸して家賃収入で生計を立てるという、賃貸を目的とした売買だったので、実際に現場で家主様と顔を合わせている立場から考察してみようと思います。
- 親から引き継いで家主になっている人は多い。
高齢化社会の波は不動産業界も直撃しています。高齢化と賃貸についてはまた別に記事にするとして、実際に家主様がご高齢で亡くなる方も多いので、ある日お電話したら「父は他界致しまして、今は私が管理してます」というお話を頂くこともしょっちゅうです。
今回のドラマのように両親の他界後に子供(もしくは親族)が引き継ぐというのはよくあることなんですね。
- 家賃収入という夢。
ドラマでは家賃収入が引きこもりの生涯を保証する、もしくは働かなくても一生食いっぱぐれない夢のシステムのように描かれていましたが、現実はもちろんそんなに甘くありません。
税金に対しては詳しくないのですが、やはり相続税や固定資産税、名義変更などの諸手続きが必要なのは容易に想像ができます。
私は離婚したときに、二人の名義だった戸建を相手方の名義に変更する手続きをしましたが、それはそれは大変な労力で、二度と不動産には手を出すまいと心に誓った程です。
分譲マンションで同様の労力が必要なのかは分かりませんが、私の場合はお金が掛かりました。それも何とかに対する○分の1円とかが掛かったのです。
つまり「変更手数料○円になりまーす」とか言うレベルじゃ無いのです。資産のうち○割を手数料として支払うというシステムなのです。
私の場合は割合的にそれほど権利を持っていなかったので、数万円で済みましたが、それでも数万です。
丸々権利を譲渡するとか、半々で所有していたら数倍の金額になっていたでしょう。
名義を変更するだけでお金が掛かるということは余り知られていないように思います。
- 家主になるということ。
話が反れました。
例えば今回のドラマでは、不動産購入の時点から息子さんの名義にしたとして、そういった金銭は掛からないものとしましょう。(税金の部分は置いておきます)
借り手も見付かり、月に10万前後の収入が入ってくるとします。
自宅のローンは無い訳ですから、働かずして10万もあれば確かに一人食べていくだけなら何とかなりそうです。
しかし家主というのは誰かに貸したらハイ終わりという立場ではありません。
部屋の設備(給湯器やインターホン)が壊れれば、家主の持ち物ですから、修理金を負担しなければなりません。
仮に入居者の過失であったとしても、全員が全員素直に申し出る入居者とは限らないわけで、明らかに入居者の過失であるにも関わらず入居者が認めなかった場合(最近だと大概入居時に保険に入らされるので、それで賄えることが多いのですが)、最悪その入居者と争うことになります。
入居中に問題が無くても、退去時に大きな問題が発覚したり、金銭面でトラブルが起こることはママあります。
また、分譲マンションの場合、現状回復の工事に入るだけで管理会社に申請が必要なケースが多いです。
またその申請というのが“工事の1ヶ月前に届けること”とか制約が付いてるものがほとんどになります。
購入時に渡されるマンション管理規約にはしっかり明記されているのですが、なかなかそこまで把握している家主は少なく、工事発注後に「1ヶ月も空室にしておく訳にはいかないんだよ!こっちは生活掛かってるんだからさ」と怒鳴り込んでくることもしばしです。
- 結論
つまり、家主には①入居者および仲介業者、ならびに施工会社とやり取りが出来る最低限のコミュニケーション能力②突然の出費に備えることが出来る経営能力の二つが必要だと言えます。
今回のビビる大木さん演じる息子さんのように、一応とは言え社会人経験があり、ブログ等で外界とのコミュニケーションを求めている方であれば、これをきっかけに家主として社会復帰が可能かもしれません。
しかしながら“引きこもりの城”という表現は少々誇大ではないかと考えます。
安易な選択肢には加えていただきたくないものです。
三軒屋さんの言葉を借りれば「知ったこっちゃあない」話です。
家を売るその目的を達成することだけが三軒屋さんの“仕事”であり、このドラマの魅力なのですから。