*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

残念ながら、結婚は貴方の何物をも変えない。

現在20代半ばの男の子・Wくん。

職場の後輩である彼は、結婚を考えている彼女がいるにもかかわらず、フェスで出会った女の子とその日の内に関係を持ち、更にその相手に本気になられて迷惑――などと曰うクズ野郎である。

 

本人も「いやぁ、俺マジでクズなんで!分かってますんで!」とかしょっちゅう言い訳しているが、自覚していることは別にエラくも何とも無い。“分かってんならさっさと直せよ、バーカ”である。

 

そんな彼が、二言目には「結婚したら変わると思うんすよ、俺」と口にする。「子供はそんなに好きじゃないけど、自分の子供だったら可愛がれると思うし」「結婚したら明け方までゲームとか出来なくなるんで、今の内一人暮らしを満喫しておかないと」

 

彼のこんな言葉を聞かせられる度に、川平慈英さんばりに“ムムッ”と思ってしまう。――この子、自分の為にも、相手の為にも、結婚しないほうがいいんじゃないの?

 

実際、私がバツイチである理由の一つは、自分自身が何一つ期待通りに変わらなかったからだ。

 

結婚したら料理とか好きになるかも。

結婚したら子供欲しいとか思うかも。

結婚したら色んな意味で大人になれるかも。

 

なんだかんだで10年も結婚生活を送ったが、年月も環境も私を変えることは無かった。衣食住に興味を持つことも、子供を作りたいと思うことも、大人の常識を身につけることも無かった。人が変わるのに、年月も環境も必要だけれど、それ以上に【変わるんだ】という気持ちが無ければダメなのだ。自分のために、彼女のために、子供ために【変わるんだ・変わる】という覚悟――本当の意味で、愛が試されているのだ。

 

逆に言えば、相手だってそう簡単には変わらない。当たり前だけれど、貴方に理想の結婚生活があるように、相手にも理想の結婚生活がある訳で、中身によっては結婚前からその理想のズレが明確になっていることもある。本当に残念だけれど、そのズレが自然に埋まることはない。ズレに対してどちらかが諦めることで一度解消したかに見えることはあるが、それは諦めた側のわだかまりとしてずっと心に残ることになる。相手の心にわだかまりがあることを、諦めさせた側が受け止めて、同様に心に残すことでしかこの問題は昇華できない。特に夫婦関係に於いて、このことは至極当然の思いやりだったりするのだけれど、自分も含めてみんな自分本位になりがちなんだよなぁ。

 

じゃあ、結婚前にそういう面倒な部分まで踏み込んで話し合っておけってこと?と思われるかもしれないが、結婚前の浮足立っているカップルにそんな酷なことは言わない。実際、結婚なんてそこまで意味のないこと(してみれば分かるけど、結婚したからって何が変わるわけでもない)に踏み切るには、多少の勢いと思い込みが無ければ出来ないと私は考えている。だから勢いで子供を作るのもいいし、籍入れてもいいし、仕事を辞めるのもいい。クズ男の後輩も、彼女と結婚してみればいい。そしてぜひその身を持って、結果を実感して欲しいと思うのだ。