*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

ドラマ『覚悟はいいかそこの女子。』感想。

※原作コミックスは未読です。

 

なんだかんだでスイーツ映画が嫌いではない。

とは言え、さすがにすべてを網羅している訳ではなく、基本的にキャストで見定め、映画館まで観に行くか、ネット配信を待つか決めている。つまりはストーリーと言うよりも、スクリーンに映る女優さんなり俳優さんなりのその顔を、どれだけ見つめていたいかという欲求に基づいている。

 

何かと軽んじられることの多いスイーツ映画ではあるが、これだけ量産されているのだから、何かしらの需要なり理由なりがあると思われる。想像するに、やはり人気役者を配することによる一定の見込と、広告展開のしやすさ、原作を抱える出版社とのWin-Winな関係…など、少し素人が考えただけでこれだけ利点が上がるのだから世話はない。

更に最近は、映画の広告を兼ねた連続ドラマを先行放送するという手法も頻繁に取られている。これもまた2時間弱という制限時間のある映画では追いかけ切れない心理描写の補填であったり、撮影も映画と並行して行うことができたり、ドラマ版のパッケージ(Blu-rayBOXなど)の売上が見込めたりと、これまた良く考えたなぁと感心せずにはいられないビジネス展開である。

 

それでも同じようなものを繰り返し観させられれば飽きが来るのもまた事実である。だからこそ、各社切り口を変えて臨んでくる訳だが、この『覚悟はいいかそこの女子。』はその最たるものではないだろうか。

 

愛され男子というリアル。

少女漫画では少々珍しい男子目線で語られるストーリー。主人公:古谷斗和(ふるや・とわ/演:中川大志)はごくごく普通の男子高校生でありながら、甘いルックスと高いコミュニケーション能力だけで“愛され男子”の名を欲しいままにしている。勉強はちょっと苦手。運動は体育の授業で多少目立てる程度。制服の着こなしに多少こだわってはいるけど、美容や筋トレには無頓着。休み時間のもっぱらの話題は“どうしたら女子にモテるか”だけど、何もしなくてもモテている自覚があるか大して真剣ではない。それでも昼休みには複数人の女子が手作り弁当を手に群がってくる、天然の“愛され男子”。

女子が群がるという漫画ならではの誇張表現を除けば、実際クラス単位や学校単位でモテる男子というのは、いわゆる斗和のような“愛され男子”――クラスの人気者ではないだろうか。今流行りの王子様系や俺様系なんかより到底リアルである。

更に斗和は、女子にモテるんだけど何処か憎めない、根強い同性からの人気もあり、とにかく普通にイイ奴だったりする。特にこのドラマ版は、毎回ゲストとなる同級生(男)の恋愛を斗和が応援すると言う構図になっており、斗和が見た目だけじゃなくて、本当に友達にしたいくらいイイ奴だ!と思わせるのに十分な効果を発揮している。

モテるくせに他人の恋愛相談にばかり奔走し、励ましたり同情したりしていた斗和自身の恋愛は劇場版で!という戦略はちょっと珍しい。挙げ句、映画版が既に予告の段階でネタバレしていて、愛され男子代表のであるはずの斗和が、本命の女子にはこっぴどくフラレると言うのだから、興味がそそられない訳がない!東映にしては(失礼)珍しい切り口のプロモーションだ。

 

 

登場女子が可愛くないリアル。

ドラマ版でもっとも度肝を抜かれるのが、とにかく出てくる女子がみんな可愛くないこと。失礼だがこれがこのドラマの最たる魅力だと思っているので、声を大にして言いたい。とにかく女子が可愛くない。

男性側の若手俳優さんは、知名度があったりネクストブレイクが期待できそうな面子なんだけど(このブログの趣旨が上から目線なので諸々ご容赦いただきたい)女子はリアルにクラスにいそうな女子なのである。よく見ればみんな細くて手足は長いし、髪もキレイだし、クラスにいたら間違いなく可愛い系に該当するレベルなんだけど、超絶美少女が闊歩する昨今の若手女優を見慣れていると、どうしても「ん?」と思わずには居られない。

そしてゲストのイケメン俳優たちが、その可愛くない女子たちに恋をする。ちょっと自分のことをかばってくれた。怪我をしたときさり気なく絆創膏をくれた――そんな些細な出来事をきっかけに、男子たちはたちまちその女子を可愛い認定してしまうというリアル!

更にその可愛くない女子たちは、男心を手に入れたと確信するや否や立場を逆転して主導権を握ったり、あっさり彼らを振ったりする。

 

【女子って怖ぇ…】

 

というのが、、このドラマの裏テーマなのだ。そして女子の怖さを目の当たりにしながらも、彼女たちに恋をし、好かれたいと努力し、あわよくばエッチしたい!と思ってしまう切ない…けれど愛すべき男子たち。

「覚悟はいいかそこの女子」というタイトルとは裏腹の、リアルな男子の恋愛事情が詰まったドラマなのだ。

 

でも私たちは知っている。本気を出した男子に、自分たちは勝てないと言う事を。

いくつになってもバカやってる男たちを愛おしいと思ってしまう事実を。

 

どんなにヘタレて見えようが、覚悟を突き出されたらきっとほだされてしまう。それが分かっているから、超イイ奴である斗和の恋愛を応援してしまう。本気男子の怖さに胸キュンしてしまうダメな私たちには、何処か覚悟が足りないのかもしれない。

 

ドラマとセットで楽しみたい、今期一番のお楽しみドラマだ。