*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

嫁=家政婦とは限らない。

先日、会社の喫煙室でこんな会話が聞こえてきた。

 

男性社員A(60代) 「彼女いるんだろ〜?結婚しないのか?」

男性社員B(30代) 「…ええ、まあ、まだちょっと…」

男性社員A(60代) 「結婚はいいぞ〜。掃除・洗濯は自分でやらなくていいし、飯は用意されてるし」

 

ゾッとした。女をなんだと思ってるんだ。嫁は家政婦じゃないぞー!と廊下で一人シュプレヒコールを上げていたら、通りかかった別の社員さんに笑われてしまった。いや、でも笑い事じゃない。そんな気持ちで結婚されてはたまったもんではない。

 

なにも“女だからといって、家事全般をやる必要はない”などという極論を振りかざすつもりは毛頭ない。逆もまた然りで、とある女性が「結婚はいいわよ〜。外で働く必要はないし、毎月お金が振り込まれてくるし」などという会話をしていたって同じように悪寒が走っただろう。夫はATMじゃないぞー!というあれである。

 

もちろん「愛する夫のために家事全般は私がやります!」というのも良いと思うし、愛する妻のために頑張って稼ぎます!という男性も素晴らしいと思う。要は、家事全般をやらなくて済むことがその人の結婚の良さとは限らないということを言いたい。もしかしたら社員Bさんの方が、家事が好きだったり得意だったりするかもしれない。それであれば堂々と家事をすれば良いのだ。そこにあった男女差なんてとっくに失われていたと思ってたのに、突然耳に飛び込んできた時代錯誤な物言いに、ぶわっと怒りが沸いたのである。

 

思えば、私の両親も60代であるが、私の彼が正社員でないことを未だに気にしている。本人たちも、正社員であることだけが人の価値ではないし、私(娘)の幸せとは限らない、と頭では分かっているようなのだが、心のどこかで引っ掛かってしまうらしい。きっと二人の経験がそうさせているのだから否定はしない。結果として放任してくれていることには感謝しているけど、理解されないと感じることに寂しさはつきまとう。

 

かく言う私だって、経験に基づいてこの話をしている。というのも、私は母からよく「結婚したら料理も出来るようになるし、洗濯だって掃除だってするようになるわよ」と言われて育った。今思えば、母は家事全般が好きでも得意でもなく、結婚を機に父や私たちの為に家事をせざるを得ない境遇だったから、まさに自身がそうだったのだろう。そうして私も結婚をして、これでも10年以上主婦経験を経ているが、結局未だに料理には興味が持てない。レシピ通りに作ることは出来るが、より美味しく食べたいとか、冷蔵庫にあるものでパパッとということは出来ない。母が結婚をして家事全般をこなすことが出来るようになったのは、ひとえに愛の成せる業だったのだなぁと感心してしまう。

 

では現在はというと、猫中心の生活なので料理は全て諦めていて、もう半年以上料理していない。猫にとってはネギ類全般が毒なので、みじん切りなんて到底出来ないし、してもどこかに落ちてないか気が気でならない。まだ熱の残るコンロに平気で飛び乗ろうとする猫を制止し続けるのも、料理のたびにガス台から床まで飛び散った細かな油を拭き取るのも面倒になってしまった。彼氏も別に料理をさせるために私と暮らしているのではないという考えなので、別段それで責められることもない。この点はお気楽にやっている。掃除と洗濯は、完璧ではないけれどもちょこちょこやるようにしている。これも基本的には猫の為。洗濯は彼もやってくれるけど、掃除はしない人なので、私自身が気にならない程度にやる。ちゃんとやろうとは思わずに“やらないよりはマシ”という気持ちで取り組むのが、私が長年生きてきて培った気持ちの持ちようである。

 

みんなそれぞれ、変な世間体や意識に囚われないで、満足が得られたらいいのに。