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*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

本音とか建前とかお世辞とかマナーとか。

さて。

昨年記事にも出した、妊活宣言をしていた一番若い女の子が退職してしまった。残念ながらおめでた退職ではなく、心因的ストレスによる突然の退職となってしまった。つまり不登校ならぬ《不登社》である。

 

本当にそれは突然に訪れた。週が明けての体調不良による休みが、2日続いたその夜、例の還暦ババアが「あいつもう来ないから」と言い放ったのである。その日は残業して皆で彼女の残していった荷物を小さな箱に詰めて、無情にも着払いの伝票を貼り付けた。覚えることの多いこの職場で、彼女が必死に、ギリギリまで控えていたメモをシュレッダーに掛けながら、親しくもなかった私ですらちょっぴり涙が出そうになった程である。

 

私は本当に気付かなかったのだが、例の妊活宣言以来、職場での彼女の立ち位置は危ういものとなっていたようである。そもそも妊活前言を機に「辞める」という結論を出していたのだから、辞める会社に何も義理立てする必要はなかったのに、私のような会社の端くれにはいつもと変わらない彼女しか見えなかった。親しかった還暦ババアにもAさんにもBさんにも、ずっと変わらない口調で、いつもと変わらない話題で、盛り上がっているように見えていた。それが突然、還暦ババアともAさんとも話したくない一心で、いきなり電話口で社長に退職の意思を告げて、二度と会社には行けないと言ったというんだから、どれほど我慢していたんだろうと思う。

 

Eさんの荷物を一緒に片付けたCさんと一緒の帰り道、私は「(そもそも妊娠の時期をずらしてと言った会社の頭がおかしいのはさておき)妊活宣言なんてしなくて良かったのに」と呟いた。それに対してまだ20代前半のCさんは「Eさん、真面目なんですよ」と返してきた。…え?真面目だと会社に妊娠の許可も取るの?とアラフォーのおばさんは思ってしまった。いつからそんな風潮になったの?妊娠はいつも突然に、じゃなかった?

 

今回のEさんの退職騒動で、Eさんと一番親しかったBさん(やっぱり20代)からも話を聞く機会が出来た。どうやらBさんも還暦ババアの頭の悪さや、そんなババアを何故か心から崇拝しているAさんについて行けないと感じているらしい。しかしながら、職場では還暦ババアがはまっているというかぎ針編みに一緒になって参加したりだとか、Aさんの観ているドラマについて毎週感想を言い合ったりとか、彼女たちを嫌っている素振りなどまーったく感じさせないのである。「あんなの建前に決まってるじゃないですか。そうでもしないと、仕事やりづらいし」とBさんは言う。いやいやでもちょっとやり過ぎじゃない?とおばさんは思う。きっと、辞めてしまったEさんも、そういう《社会の建前》を深く履き違えてしまって心を壊すことになってしまったんじゃないだろうか。プライベートにまでやりたくないことが、仕事の延長として入ってきてしまう…彼女たちはLINEでも繋がりがあったから、より日常への強制力が働いてしまったのかもしれない。でもそれって何だか中高生のコミュニティと何にも変わりないじゃないか。

 

Eさんに辞められてしまったことで、Bさんはますます辞めづらくなってしまったと言った。だから私は「いつでも辞めて良いんですよ、こんな価値もない会社」と言ってあげた。「困らせてやればいいんですよ」と。私がそんなことを言うとは思っていなかったようで、Bさんはとても驚いていたけれど、伊達に長く生きてはいないのである。駄目になる時は駄目になるし、駄目だと思った時に何とかなるのも会社だったりする。申し訳ないけれど、絶対に必要な誰かなんて存在しないのである。自分も含めて。

 

本当にひどいのは、半世紀以上も無駄に生きている還暦ババアである。Eさんの結婚祝いには立派な高級ガラス細工のペアオブジェをプレゼントして、自分のセンスの良さをアピールしたり、可愛がっていたEさんに対して「あいつは元々頭が悪いところがあって、今回も会社に損害を与えるような意味不明なこと(繁忙期に妊娠したいと言ったことを指しているらしい)を連発した挙句、自分を通り越して社長に直談判してもう会社に来ないとか言いやがった、ふざけんじゃねぇ」とかほざいている。どっちが頭悪くて意味不明なこと言ってるんだよ、おめーだろと言いたいところを「(あなたの頭が)心配ですね」と言ったら、「本城さんは優しいわね」だって。あほらし。

 

還暦ババアの物言いに対し、心にも無いことを返す必要は無いのである。それを最近の若い子は建前とか付き合いとかと履き違えてしまっているように思うのだ。私の「(あなたの頭が)心配ですね」という返しのように、本音でありながらも、相手によってどうとでも受け取れる文句で自分の心を守る術こそが建前であり、大人のマナーだったりする。それを「本当にEさんはひどいですね。還暦ババアさんの仰るとおりです」なんて心にも無さすぎて反吐が出るような台詞は建前とは言えない。自分の心を傷つけるだけである。

 

仕事や会社なんて、生活の為、自分の為に必要なだけであって、道具によって自分を傷つけたり苦しめたりするのは本末転倒である。それでなくてももう人材不足の波は業界を問わず襲っていて、会社が人を選ぶ時代から、人が会社を選ぶ時代になっているのだ。ましてや20代の若くて働ける可愛い女の子が、傷付いていい場所じゃない。もっと自分が楽な方向に楽な方向に流されていって良い。良いんだよ。