*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

感想『オオカミ少女と黒王子』16巻

オオカミ少女と黒王子 16 (マーガレットコミックス)

オオカミ少女と黒王子 16 (マーガレットコミックス)



※ネタバレを含みます※

1巻を表紙買いしたのは、もう何年前になるだろう。とにかく絵が上手くて、佐田くんのSっぷりが程好くて、一気にハマって繰り返し読んだ記憶がある。

今回も楽しみに最新刊を買ったら、何と最終巻だった。今時珍しいくらい見たい処まで見せてくれる最終巻でした。そして読み終わってしみじみと"ああ、このお話は佐田くんが幸せになる話だったんだ"と思った。「エリカ良かったね」ではなく、「佐田くん良かったねぇ」である。それでも何だかんだ言って佐田くんが究極に女にとっての理想の男子であることは間違いない。佐田くんはエリカの為に自分の人生を費やすことに決めたのだ。エリカは尽くしているようで、自分のやりたいことしかやっていない。佐田くんはエリカのやりたいことをやらせる為に、就職もしたしパパもやっているのだろう。やはり佐田くんは女にとって都合のいい男で、それが少女漫画としてこの漫画が成立している所以である。

だけどこの物語はエリカ視点の佐田くん幸せ物語だと改めて強調したい。エリカは実は佐田くんじゃなくても幸せになれるが、佐田くんはエリカじゃないと駄目なのだ。裏を返せば、エリカのようなタイプは幅広いタイプの男性から好かれるし、大抵の男子と付き合って上手く行く。それは持ち前の素直さだったり明るさだったりする訳だけど、佐田くんにはそれが無い。付き合うタイプを選ぶと言うより"信用出来る相手に巡り会えるか"がカギだからだ。

ここまで来ると感覚的なものなんだけど、相手が佐田くんに心を開くかどうかでは無くて、佐田くんが心を開ける相手かどうかなのである。だから彼はものすごく人を試す。けど気に入った結果を出した相手こそ疑うような、基本的に警戒心とプライドの高い人なのだ。自分のプライドを傷付けず、警戒も必要無い相手はそうそういない。だから、エリカが幸せになる確率より、佐田くんが幸せになる確率の方が低かった訳で、そんな佐田くんが幸せそうな最終巻を読んで「佐田くん良かったねぇ」と呟かずにはいられなかったのだ。

残念ながら映画化には興味はありませんが、本当に大好きな作品でした。テンポも良くて意外性もあって、パターン化しがちな少女漫画の中でも先が読めないオチが多かったです。最終巻はさすがにこうするしかないかって感じでしたが。

ドS男子漫画の中でも、理不尽じゃなくて一方的でもなくて、何気にいつも正論をぶちかましている佐田くん、本当おすすめです。