*Complex+Drive*

勝手に上から目線の、真っ黒な。

乙女のロジック。

さて明日はドラマ『今日は会社休みます』が無い水曜日である。
世間では“田之倉ロス”という単語が出回るほど、今期のドラマの中では好評だった当作品であるが、果たして手放しで「満足した!」「良かった♪」「Blu-rayBOX買うわ~」などと思える最終回であっただろうか?
否、私のように「…あれ?」とある意味期待外れだった人の方が多いのではないだろうか。

この一週間だらだらとこのもやもやの原因について考えてみたのだが、やはりこれは乙女ゲームのセオリーに準じなかったことが一番の問題ではないかと思われた。

ドラマ『今日は会社休みます』は実にベッタベタのコッテコテの、良くも悪くも定番のジャパニーズラブコメディーであった。
最終回は10分拡大して丁寧に“一年後”のテロップが入るくらい分かりやすい最終回だったのだ。
しかし肝心の中身はと言うと、10分の拡大など不要では?と思えるくらいスカスカで、挙げ句消化不良を起こすくらい足りないものだった。

田之倉くんは乙女ゲームの攻略対象よろしく、女にとって都合のいいキャラクターとして描かれていたように思う。
年下でかっこよくて背が高くて、抱き締めて頭をぽんぽんしてくれる、朝ごはんを作って起こしてくれる。
適度に草食系で適度に肉食系。
最近のドラマには珍しいくらい特徴がないのが特徴な優等生キャラ。
主人公:花笑のモノローグで綴られる本作は、乙女ゲームのようなファンタジー性(現実離れした、処女的な)を持って、我々視聴者をドキドキさせてくれていたのである。

そんな乙女ゲームでは定番なのに、このドラマの定番になかったものとは何か。

それは“田之倉くんの独白”だと思う。

乙女ゲームのハッピーエンドルートが確定すると、これまで寡黙だったキャラクターも一気に主人公への愛を語り出す。
「キミのこんなところに惹かれた」「あの時の貴女の一言に私は救われた」等々。
これまでの回想も絡めて“どうして彼が私(主人公)を好きになってくれたのか”が明るみにでるのである。
私たちはきっと、田之倉くんの花笑に対する愛の言葉をもっともっと聞きたかったのだ。
なのに「そのままの君でいいから結婚して」と言って来たのは朝尾さんだった。
それはそれで“イケメン二人に挟まれた主人公”というこのドラマの醍醐味ではあるのだが、田之倉くんの甘~い台詞を期待していた私たちにとっては、結局田之倉くんから聞きたい台詞を聞けないまま終わってしまった訳だ。

いきなり話は変わるがドラマ『Nのために』を一緒に観ていた母親が

「女ってどうしてこう『この人と一緒になれば幸せになれる』って分かりきってても、面倒くさい男の方を選ぶんだかねぇ…」

と呟いていたが、これは『今日は会社休みます』にも当てはまる。
朝尾さんははっきりと「そのままの君でいい」「好きにしていればいい」と言ってくれていて、実際気の置けない関係なのだからこれほど魅力的な申し出はないだろう。
それでも色々な意味で苦労しそうな(義理の母親が料理研究家だなんて、例え鈴木杏樹だろうと私はまっぴらごめんだ)田之倉くんと結ばれたいと願ってしまう乙女心。
クリスマスイヴに最終回を合わせてこなかったのも、何だかとっても不思議な気がするのである。